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第5話 川へ遊びに

Author: みみっく
last update Last Updated: 2025-11-30 14:38:43

 そして、一口かじると──

「おいしぃねー!」

 ユウはニヤッと笑って答える。

「そりゃそうだろ。ミレディが焼いたんだから、不味いわけがないよな。旨すぎだぞ、これ。」

 その言葉を聞いた瞬間、ミレディは、ぱぁっと最高の笑顔を見せてくれた。

「えへへぇ……うれしぃ……♡」

 昼食は、ゆったりとした時間をかけて楽しんだ。

 可愛らしく喜ぶミレディの姿を見て、ユウは抱きしめたくなる気持ちを抑えるのが大変だった。なにせ、男に襲われたばかりの女の子だ。だが、せめて彼女をたくさん喜ばせてやりたいという思いが強かった。

 焼きたてのパンに、じっくりと火を通した野菜――ミレディは、ひとつひとつに興味津々で、嬉しそうに笑っていた。

 そんな穏やかな時間の中、ふとミレディが口を開いた。

「日が暮れたら帰るぅ……?」

 その言葉には、ほんの少しの寂しさが混じっていた。

 ユウは目を細めながら、考える。確かに、予定はある。だが――休みはしっかり取った。強制的に休むと伝えてあるし、家に帰らなくても何の問題もない。テントは収納にあるし、食料も十分だ。

 ……となれば、帰る理由はひとつもない。

「もしかして、ミレディ泊まりたいのか?」

 そう聞くと、ミレディはぱっと目を逸らし、ほんのり頬を染めながら呟いた。

「べ、べつにぃ……ユウくんは……いやぁ?」

 ――ん?

 いつのまにか「ユウくん」呼びに変わっていた!? おお……昇格か!?

 ミレディの変化に、ユウは少し嬉しくなりながら、焚き火を見つめながら答えた。

「そうだな。ゆっくりと休んで帰るか……」

「え? わ、わぁー……♪ やったぁ!」

 ぴょんぴょんと跳ね、満面の笑顔を見せるミレディ。その様子があまりにも嬉しそうで、こっちまで幸せな気分になった。

「食べ終わったか? よし、川で遊んでもいいぞ。でも、遠くに行くなよ? 流されて帰ってこれなくなるからな。」

 ユウがそう言うと、ミレディは突然動きを止め──

「え……いや。帰るぅ。ちがう、ユウくんとずっと一緒がいい。」

 ぴたりと腕にしがみついて離れなくなってしまった。

 ……脅かしすぎたか?

 いや、ここの川は足の脛くらいの深さしかない。急に激流になることはないし、最近雨も降っていない。それに──万が一流されたとしても、俺がすぐに探し出して助けられる。だから、安心させることにした。

「あはは……流されるほどの深さもないから、大丈夫だったりするぞ。ミレディが遠くに行くと、俺が心配するってことを言いたかっただけだって。寂しいから近くにいてな?」

 ミレディはユウの言葉をじっと聞き──ゆっくりと顔を上げた。

「……ユウくん寂しい? ほんとぉ?」

 瞳を覗き込むように、まっすぐに聞いてくる。

 ユウがふっと微笑むと──

「わかった! 近くにいるね。ちょっとだけ……あそんでくるね?」

 ぱぁっと嬉しそうな顔になり、少しだけ離れて水辺へ向かう。ミレディの心遣いが微笑ましくて──ユウは、少しウルッときた。

「ユウくん、ユウくん! 変なのがいたぁ!!」

 ミレディが急に駆け寄ってきて、ユウの服をぎゅっと掴んだ。なんとなく想像はついたが、一緒に川へ向かうと──

 うん。やっぱり魚だ。

「さっき説明した魚だぞ。焼いて食べると旨いぞ。」

 ユウがそう言うと、ミレディの目がキラキラと輝いた。──これは、獲る気満々だな。

「だが、魚は素早い。簡単には獲れないぞ。」

 ユウは心の中でそう呟きながら、ミレディの様子を観察する。すると──彼女は意気込んで川の水面をじっと見つめ始めた。

「……うん、わかった! つかまえるぅ!」

 その瞬間、ミレディはまるで狩人のような真剣な表情になり、じりじりと川へ近づく。ミレディは川の水面をじっと見つめ、魚が近づくたびに、慎重に手を入れて掴もうとするが──何度も失敗した。

「むぅぅ……。」

 うなり声を漏らしながら、悔しそうに水面を見つめるミレディ。しかし──突如、思い切った行動に出た。

 バシャン!

 勢いよく川の中に飛び込み、魚を追い回す。手では掴めなかったが、必死に追い回した結果──魚が岸上へ弾き飛ばされた。

「……獲れたぁ!!」

 ミレディは、ぱぁっと最高の笑顔を見せた。

 そして──そのまま続けて魚を追い回し、5匹も獲ることに成功!

 ユウは、その光景を見ながら、くすっと笑った。

「おぉ、すごいな! 意外な才能が開花したな?」

 ミレディは自慢げに胸を張りながら、嬉しそうに笑う。だが、服がびしょびしょに濡れていて……直視できない。白いワンピースは色々と透けて見えていた。

 ユウがあからさまにミレディから目を逸らすのに気が付き、彼女は恥ずかしそうに体を隠すように背を向けた。

「あぁ、着替えがないか」と、ユウも顔を逸らし呟いた。

「……だいじょうぶっ。そのうち乾く……うん。乾くから! 暖かいしぃ」

 ミレディは堂々とした笑顔でユウに近寄ってきた。

「おさかなぁ、焼くぅ? わたし焼くよっ」

 無邪気にそう言う彼女からは、また褒めてほしい気持ちが伝わってくる。

 いや、時間! 昼食が終わったばかりだ。魚は焼き立てが美味しいけれど。

「まだ、時間が早いかな。今、昼飯食べたばっかりだからな。」

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